29. dubna 2023

働いていた頃に比べ自由な時間がたくさんできたので、空き時間には読書をするようにしている。いつでも途中でやめられるところが読書の利点とはいえ、心と体、そして時間に余裕がないと取り組むのはなかなか難しい。動作だけで言うと座って目を動かしているだけなのだけど、体力と気力と、何より根気が必要な趣味だと思う。元々本は好きだったし、図書館や本屋という場に足を運ぶのも習慣づいていたけれど、借りたり買ったりするものの結局読まない・読めないことが多かった。本を読んでいると、この時間があることこそが本当の自由なのだと嬉しく思う。
最近はレベッカ・ソルニットの本を読むようにしている。ON READINGのイベントで取り上げられた『ウォークス 歩くことの精神史』がとても面白かったので(まだ全部読めてないけど…)出先で図書館が近ければ、彼女の本を探して借りている。ソルニットはヒリヒリと焼けつくような文章を書く。彼女が女性の社会問題について述べる時、私が今まで考えないようにしていたやるせなさ、諦観などに対して「本当にそれに向き合わなくていいのか」と疑問を突きつけられている気がして、どこか罪悪感のようなものを覚える。事実、政治的な話題や社会問題の話を他人と共有するのが苦手で、たびたびニュースなど目にしてもぼーっと眺めるだけと言うか、ぬるっとやり過ごしてきた自覚がある。自分で自分を抑圧しているとも言える。
30年も生きていると昔からの習慣を変えることはなかなか難しく、ソルニットの本を読んでも素直に呑み込むまでにタイムラグが発生する。本当はちゃんと自分の主張や意見に輪郭を与えたい。そうするにはたくさん考えなければいけない。今まで見過ごしてきたものに目を向けなければならない。そのために自分に何ができるだろうと考えている。とりあえず、自分の頭と心の蓋を取るためには、たくさん本を読もうと改めて決意した。とにかく読んで、読んで、読んで、たとえばフェミニズムの、こういう考えを持つことはおかしくない、主張してもいいのだと、普通のことなのだと自分に許可を出してあげる。徐々にしかできないだろう。時間はたくさんかかるだろうけど、気づいた瞬間から始めれば、手遅れなんてことはないのだと信じている。